追い風

例のプレゼンによって風向きが変わった.課長が自分を見る目が変わった気がする.その分仕事を進めやすくなったし,良いことだ.

俺はプレゼンが好きだ.プレゼンはどれだけ準備をしても本番で失敗すれば,何の価値も無い.もちろんプレゼンに至るまでの努力の過程も見れば,それはそれで本人のためになったりして良いことだけど,純粋にプレゼンの目的から見れば失敗は何の評価にもならない.

予め決められた日時に,わざわざ会場を用意し,大勢の人にわざわざスケジューリングをして来てもらい,長い時間我慢して一方的に話を聞いてもらう.それに対してこちらは,前もって綿密に準備を行うことができて,様々な効果的なツールを使いながら,与えられた時間の範囲内にいる間は,自由に意見を相手に伝えることができる.

簡単に言うと「俺の話を聞け」というような言いたい内容が合ったとすると,それを完璧な条件で実行できるということだ.そういうチャンスは,欲しいと思っても本来やすやすとは得られるものではない.特に,大勢の目上の方などに自分の話を黙って聞かせる機会なんてはっきりいって他には無い.

また大きな仕事の流れの中で,その重要なポイントとして行われるようなプレゼンには,それまでの全ての関係者がこなしてきた仕事を,一瞬にして駄目にしてしまう危険性もある.

プレゼンの準備にはたっぷり時間と手間隙をかける.どのスライドで何の話をどんな順序で話すのかを,自分の頭で納得の行くまで練り直す.声に出してみて,スムーズに説明できない部分が少しでもあれば,また練り直す.そうやってプレゼンを通しての話す内容を洗練させつつ,自分の頭に話す内容を叩き込む.スライドが無くても話ができるくらいにまでプレゼン内容を自分の体になじませる.

予行演習というようなものを行えない場合でも一人で予行演習をすべき.話をもっと分かりやすくするためのアドリブを追加できるようになったら余裕が出てきた証拠.その頃には,自分はそのプレゼン内容を誰かに大きな声で伝えたくて仕方が無い人,になっている.あとはその気持ちを保ちつつ当日を迎える.

当日は気合と冷静さが必要.プレゼンを開始したら,客の反応を見ながら,声の調子,ジェスチャーなどをチューニングする.硬くなりすぎると伝えたいことが伝わりにくくなるので,適度に笑いを取るため適宜アドリブを入れる.

昔は人前で話をするのが嫌いだった.もともと他人に自分の考えを伝えるの自体が苦手だった.大勢を相手にして緊張すれば尚のこと.苦手だったから嫌いだったという感じ.

学生のときに駿台予備校のチューターのバイトをやったのは,少しでもそれを克服するためだった.そこから始まったのかな.

自分は『口から生まれてきたような』天性の人とは全く違うので,プレゼンを行うにもいろいろとステップを踏んで準備していかないとならない.でもしっかり準備すれば,リップサービスだとは思うけれども,いろんな方から,あのプレゼンは本当に良かった,と言われる程度くらいまでならなれる.同じことはきっと誰でも努力すればできるはず.