Oracleのオープンソース買収熱
昨今のOSS界隈のビジネス的話題と言えばOracleによるOSS企業買収なわけですが.
http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/0602/22/news040.html
ルベット氏は、SleepycatとInnobaseが「Oracleの戦略にもたらすもの」はMySQL打倒以外に考えられないという。「これらの技術の進歩と将来は、もうMySQLの手元にはありません...。こうしたデータベースコードの開発は非常に複雑であり、例えMySQLがコードを入手できるとしても、MySQLに(Berkeley DBやInnoDBの)開発者はいないのですから」
という風に早急に判断を下すのはどうですかね.
確かにInnoDBのソースコードの隅々まで知り尽くしているのはHeikki氏であり,いまやHeikki氏はOracleの完全な影響化にあるのは事実なわけですが,InnoDBがMySQLに組み込まれた2002年頃に既にMySQLのコア技術者達はInnoDBの内部アーキテクチャを熟知していたわけで(OSCON2002でのInnoDB紹介資料を参照),また関数の高速化のためにAssemblerまで駆使するMontyがInnoDBをコードベースで理解できていないなんてことは100%無いわけで,過去数年に渡ってカーネルのコンパイル引数,ファイルシステムのバージョンの違いにまで拘ってInnoDB他の性能測定を行ってきたPeterZ(MySQL UC2004を参照)が,HeikkiがいなくなったからといってInnoDBのチューニングができなくなるなんてことはありえないわけです.
もちろん「InnoDBの将来」についてはそれでもわかりませんよねという主張は認めます.
しかし,現時点においては少なくともInnoDBに関するFeature Requestを出すとHeikki本人から直々にレスがつく体制は維持されているわけで,Martin Micosの言う「フェードアウトするにしても段階的になので当面は大丈夫」というのは全くもって正しいと思うわけであります.
MySQLを最初に見て自分が一番驚いたのは「マルチストレージエンジンアーキテクチャ」を根幹に持っているということでした.「今回の一件で長期的な視点で見た場合MySQLには不安がある」と思う方もいるかもしれません.InnoDBで10年くらいは動かそうと思っていたら,このざまじゃないかと.まずこの点についてはMySQL AB側は謙虚な姿勢が求められるでしょう.
しかしこれも「想定内」なのがマルチストレージエンジンアーキテクチャ.インメモリデータベースの時代がそろそろくるかくるかとも言われています.10年たったらハードウェアの世界の常識もどうなっているか,ある意味わかりません.そのあたりも含めてどうなっていようが,アプリケーションとRDBMS間のインタフェースは全く変更する必要が無い(ストレージエンジンだけ換装してお終い)なのがMySQLというやつです.
長々と主張(dempa)を書いてしまいましたが、結局自分が言いたいのは次のことだけ.
新しいストレージエンジンの情報まだー? チンチン(AA略
元Firebirdの人の会社をMySQL ABが買収したのは,Firebirdのインメモリ版をMySQLのストレージエンジンに組み込むためなわけだし.某InnoDB代替ストレージエンジンはあとちょいで公開できそうな雰囲気なわけだし.
P.S.
関係ないけど,日本でOSSが弱いのは開発者の顔が見えにくい(言語の壁)というのが大きいと感じてる.例えばMontyやBrianがMyNAのMLや2chのMySQLスレッドに常駐していたら,どれだけ状況が違うかと無いものねだりの想像をする.日本人開発者の居るプロダクト自体は盛り上がっているようだし.Rubyとか正直ウラヤマシ.日本はみんなでJavaやめてRubyにするとか,できたらいいんだけどな.NEC/FujitsuがIBM/MicrosoftのDos/Vに負けて以来この流れはもう変わらないのかねえ.まあ今となっては国産のみで全英語圏総計でのコンピュータ(ハード/ソフト)成果物に対抗できるとは全く思えないけど.